Abercrombie&Fitch。通称アバクロ。
私もアメリカ時代に愛用していたアメリカンカジュアルを代表する1つのファッションブランドだ。
そのアーバークロンビー&フィッチの方針について、こんな残念なニュースが流れた。
経営があまりうまくいっていないことによる、経営方針の転換のようだ。
だが、私はその方針変換は完全に間違っていると思う。
このニュースによると、今後アバクロが変更する点は、下記の通り。
・音楽や香りの強い店舗を辞めて、より楽しいショッピング体験ができる店に変更
・従業員の個性を尊重し、従業員がアバクロ以外の服を着用することもOK
・上半身裸のモデルを並べる方針も変更し、今後はモデルにも服を着せる
私は問いたい。
アバクロとは何か?
どんなブランドなのか?
圧倒的な音楽とアバクロ臭溢れる店舗、裸モデルこそ、アバクロがこれまで一生懸命に作り上げようとしてきた世界観ではないだろうか。
この経営方針の変更は、ただの店舗のちょっとした変更や、川下のプロモーション方法の変更ではない。
強い独自性を持ったアバクロのブランドを、破壊する行為だ。
ブランドは長年かけて築かれるものだ。
経営者が変わった位で、ファッションブランドがどういう世界観を目指すのか、というブランド観まで変えてしまったら、ファッションビジネスは成り立たない。
昔、アバクロが大好きだったころに店舗に行った私は、アバクロの店舗体験について、このように感じたものだ。
「NYの5th Avenueの路面店には、アバクロモデルと思われる超イケメン・美人がたくさん店の中に文字通り立っている。
店内は音楽がガンガンで、彼らは音楽に合わせて踊りながら、「Hi, How are you?」と声をひたすらかける。
カッコ良くアバクロを着たモデルがアゲアゲで、いつの間にかこちらもウキウキして買い物できるし、気付けばそこはアバクロワールドである。
店の玄関正面にいるモデルのお兄ちゃんは、「写真を一緒に撮って!」と頼むとブルゾンのジップを下ろして、割れた腹筋を見せつけて一緒に記念撮影をパシャ!!
なんともカッコええやないかいっ!!
店内は照明から音楽、VMDから臭いまでとにかくとにかくとにかくアバクロワールドなのだ。
こうしたモデルや記念撮影もついついシェアしたくなるし、ブランディングとしては、本当に勉強になる。
正直アバクロの衣類は無駄に重かったり、日本のアパレルほど細かいところまで気を使った機能がついているとは言いがたい。
ただ今回のアバクロショッピングで、私のようにその機能性とかを抜きにして、とにかくアバクロブランドが大好きというロイヤル顧客がたくさんいる理由を再確認した気がした。
彼らは洋服を売っているのではなく、アバクロの醸し出す世界観やショッピングという体験を売っているのだ。」
店舗体験がスペシャルな店といえば、日本ではドン・キホーテを思い出す。
ドンキはブランドビジネスではないが、こちらも非常に独特な店作りで好調だ。
「ワクワクさせるお店づくり」という意味で、アバクロやドンキは勉強になることがたくさんある。
今回のアバクロのアバクロの経営方針の変更は、アバクロブランドを殺すことにつながる。
非常に残念だ。
アリヴェデルチッ!